東京工芸大学 色の国際科学芸術研究センター「カラボギャラリー」では2022年12月12日(月)〜3月10日(金)に第10回企画展『色を記録する展』を開催いたします。
色を記録するカラー写真やカラー映像は、何らかの形で三色分解が行われています。しかし、仕組みは巧妙かつ微細で、我々が直接に触れて見ることはなかなかできません。
現代のカラーフィルムのような高度な多層塗布技術に支えられた製品ができる以前にも白黒のネガフィルムを使った三色分解撮影と一色ずつ重ねて染色するダイトランスファープロセスやテクニカラー映画のような天然色写真、天然色映画は存在していました。また、欧米の技術に比べてあまり知られていませんが、日本にも独自の天然色プロセスも存在していました。
本展示は、写真材料商 小西六本店(後の小西六写真工業株式会社、現在のコニカミノルタ株式会社)の製造部門、六櫻社の技師長でのちに本学教授となった江頭春樹の開発による「転写現像紙」を利用した天然色印画と、小西六写真工業取締役の毛利廣雄らが開発したコニカラー映画システムを紹介するものです。製作から80年余を経過しても、良好な色彩を保つ小西六の天然色印画法を知ることは、小西六と関わりの深い東京工芸大学の建学の精神への理解を深めるものであり、大学所蔵の豊富な写真資料を活用してこの展示を企画しました。
展覧会ディレクター
矢島 仁(芸術学部映像学科准教授)
展示作品
コニカラー映画システムの特徴
コニカラーはテクニカラーの模倣だと思われがちですが、模倣ではなくテクニカラーの欠点を克服した新しいシステムであり、撮影機の三色分解光学系はバイバック方式ではなく、三本のマスターレンズからの鮮鋭な色分解像が投影される仕組みです。またプリントも色素転写ではなく発色現像方式を採用して鮮鋭度の向上を図っています。これらにより色彩の滲みを抑え、墨版なしの色素画像だけで鮮明な天然色を実現しています。
コニカラーカメラ三色分解映画撮影機
コニカラー映画プリント
映像作品
小西六本店(後の小西六写真工業、現在のコニカミノルタ株式会社)の製造部門、六櫻社の技師長「江頭春樹」氏の開発した転写現像印画紙を利用したカラープリントと、当時、既に実用化されていたテクニカラー方式の欠点を克服すべく開発された『コニカラー映画システム(三色分解撮影)』にて撮影された映像作品「可愛い魚屋さん」と「赤い陣羽織」の一部を上映いたします。
「さくら三色用フヰルム」開発の道のり
東京工芸大学に膨大な量の三色分解ネガが残されていましたが、あまりにも情報が欠けているものばかりでした。やがて写真雑誌の掲載写真と保管の原版が照合できたり、軍人や皇室関係などの写真から撮影日の特定できるものもあり、主に昭和初期の撮影であることが確認できました。
詳細に見ると分解ネガのフィルムの特徴と膜面方面の違いに気付き、さらにいくつかの色分解ネガをカラー合成してみたところ、保管されていた分解ネガは三色分解撮影を手軽に行うための「さくら三色用フヰルム」の開発にかかわるごく初期の撮影から、改良されて商品化した時点、そしてさらに改良が加わり完成の域に達したものまでの全ての研究資料であるように思えてきました。江頭式とも称される六櫻社式天然色印画の進化の道筋を展示写真でお確かめください。
轉寫 (てんしゃ)現像紙と色素液等
エンゼル魚
Color Research Lab. / カラー・リサーチ・ラボ
色の国際科学芸術研究センターによる支援のもとで実施された、本学の多岐にわたる「色」に関する研究成果展示を、企画展と同時開催します。
- ディープラーニングを利用した AI アーティストの発展(久原 泰雄)
- フォトグラメトリを元に紙で創るフルカラー3Dプリント(代表:内田 孝幸)
- アントニ・ガウディの設計手法における色と形の関係に関する実験的考察(山村 健)
- 仮題「うつろいの色、紅」学術映像の制作(代表:矢島 仁)
- 金属元素を用いない材料からの金属様光沢の特性(代表:山田 勝実)
- 有色黒鉛層間化合物の大気非暴露環境における構造・物性評価(代表:松本 里香)
展示概要
会期 | 2022年12月12日(月)〜2023年3月10日(金) |
開館日時 | 月曜日~金曜日 12:00~17:00 |
休館日 | 土曜日・日曜日・祝日 年末年始(2022年12月24日〜2023年1月9日) ※本学イベント等のため、不定期に開館・閉館する場合があります。 |
来館方法 | 新型コロナウイルス感染症対策のため、当面の間事前予約制になります。 ご来館予約フォームよりお申し込み頂けます |
入館料 | 無料 |
会場 | 東京工芸大学 厚木キャンパス |
主催 | 東京工芸大学 色の国際科学芸術研究センター |
協力 | 株式会社堀内カラー 国立映画アーカイブ コニカミノルタ株式会社 Sadatomo Kawamura Design 松竹株式会社 東映ラボテック株式会社 HIGURE17-15cas |
事業名 | 令和4年度 文化庁 大学における文化芸術推進事業 |
※新型コロナウイルス感染症対策の状況により、会期やイベントの変更、休館等の対応を行う場合があります。