東京夜色
芸術学部 写真学科 教授 小林 紀晴
大都市におけるフルカラーLEDによるライトアップを撮影することにより「匿名に満ちた均等な現代空間」を視覚化、展示構成の研究。
被写体は隅田川の橋梁群計12橋。さらに「東京って何色?」という将来への問いかけ。
フルカラーLEDのライトアップは現在、多くの都市がもつ「匿名に満ちた均等な現代空間」をより加速させると私は考える。この考えはフランスの人類学者マルク・オジェの著書『非―場所』(訳・中川真知子 水声社)に触れたことにより、私のなかに生まれた。著書のなかで、オジェはグロバリゼーションによる都市空間を「スーパーモダニティの世界」と名付け、現在の世界中の多くの大都市を「匿名に満ちた均等な現代空間」と捉えている。
インターネットによるコミュニケーション、消費空間の大型化、交通空間の高速化が進むことで都市が独自のアイデンティティを構築することができず、世界中が匿名化、抽象化ししていると結論づける。その考えに私は同意する。
だから、この事柄を写真によって何かしらのアプローチ、表現ができないかを試みるために、東京都が実施している隅田川の橋梁群計12橋のライトアップと川面に映る様々な色を撮影。さらに橋梁と川面の関係だけにとどまらず、「東京って何色?」という問いかけについて研究。