工学部 工学科 教授 松本 里香
工学部 工学科 教授 大嶋 正人
工学部 工学科 教授 山田 勝実
工学部 工学科 准教授 行谷 時男
工学部 工学科 准教授 實方 真臣
本研究は 2019-2020 年度の「黒鉛層間化合物の色標本の作製 ―色の分析とその活用―」の後継として、2021年度から実施している。分解を防ぐ超低露点環境において、化合物本来の色を記録し、構造および物性評価を行い整理する。
黒鉛層間にアルカリ金属等の物質が挿入した黒鉛層間化合物には有色のものも多く、高導電性等の特性で注目を集める物質である。しかし、その多くは大気下で分解してしまうため、化合物本来の色、構造、および物性を正しく評価することが難しく、体系的にまとめられた資料がない。
本研究で取り扱う黒鉛層間化合物は大気下で容易に分解してしまうため、2021 年度は大気非暴露で化合物の正確な構造と物性測定を実施することを目的としたが、十分な大気非暴露環境をつくることができなかった。よって、今年度は、化合物の分解が起こらない超低露点の大気非暴露環境での測定を実現する。
今年度前期は主に、2022年7月から超低露点環境を実現するためのグローブボックスの改造準備を開始し、2022年12月初めに完成・納品された。現在は、測定に向けての準備をしている。
有色黒鉛層間化合物として、これまでにカリウム・ルビジウム・セシウム等のアルカリ金属(金色・青色)、カルシウム等のアルカリ土類金属(金~銀色)、カリウムと水銀の合金(桃色・金色・青色)、塩化鉄・塩化モリブデン等の金属塩化物(青緑色)、および、硫酸(緑色)を用いた黒鉛層間化合物を検討している。合成した化合物はカラー写真と反射スペクトルで色を記録した。
今後、化合物が分解しない超低露点環境下において、X線回折測定による構造解析、電気特性の測定等を実施する。
➀ 超低露点環境下での測定
GICサンプルの正確な構造決定および物性測定のために、超低露点環境を実現するグローブボックスを整備した。本グローブボックスは露点―70°Cに達しているので、サンプルを分解させずに取り扱えるはずである。現在、本グローブボックスを用いた各測定の準備を行っている。
➁ ➀用のサンプル合成
➀の環境下で測定用のサンプルを合成した。特に、色調整の難しい桃色のK-Hg-GIC を合成した。また、Li-GIC の合成を進めている。